とりあえず、雄大すぎる浅間山を横目に見ながら、鬼押し出し園に向かって歩き出す。
鬼押し出し園は、浅間山の噴火でできた熔岩の公園らしく、なんぞ記念物だか天然遺産だかに指定された岩がたくさんあるらしい。
たしかに岩、いっぱいあるね。というか、岩しかないね。
↓入口。
入場料は600円。近く(といってもバス停2つくらいはかたい)の浅間園と一緒に見ると800円らしいけど、クルマならラクでも、バス旅行者には想像するだけで勘弁してほしい話だ。しかもそこもどうせ岩しかないんだろ。
何だか知らんが鬼どもには、家内安全の効果があるらしい。本当かなあ。なぜか誰もいない岩場に一人、雪も舞い落ちるというより吹きすさぶというかんじでけっこう寂しいんだけどなあ。夫は今頃のん気にゲームしてるんだろうな。この先もずっとそうやって生きて続いていくんだろうな。いいけどさ別に。
夫がちょっとは優しくなりますように。鬼さんよろしくお願いしますよ。
雪はさらに勢いよく降ってくる。やる気満々なかんじだ。途中、よくわからん「避難所」というコーナーを見かけたが、ねえ何から逃げるの。
熔岩から?雪から?それとも人生から?うわああん。
まあどっちにしても、この避難所じゃどれからも助かりそうにないよ。
何とか、鐘つき場と薬師堂にたどりつく。ちなみに鐘はすごくいい音が鳴ってちょっと感動した。
薬師堂で勧められるままに、よくわからんお守り700円を購入。浅間山の岩に鬼がこびりつき、裏には薬師如来様が鎮座している。またいらないものを買ってしまった。
鬼みくじ300円も引いてみる。
「大吉」とあるのに、書かれていることはちっとも大吉と思えない。
>無理して事をおこなうと大変なことになりますから、慎んでおくことです。
それはここに来たことを指してるんでしょうか。寒い。雪冷たい。
>旅行…やめたほうがいいでしょう
…今さらそんなこと言わないでよ。
>天のみこえ
>おほぞらに そびえて見ゆる たかねにも 登ればのぼる 道はありけり
…こいつは今の気分に何ともぴったりのお歌ですこと!
さらに「邪気退散」と書いた赤鬼のお札と、「勇気が出るカード」とかいう、人をバカにしたアイテムがついていた。
岩道を下って帰る。途中、ヒカリゴケの群生地とやらにきたので、武田泰淳の小説(人肉食べるあれね)を思い出し、そこらへんのコケを撮影。でも、これがヒカリゴケかどうかは知らない。
そんなこんなで1時間近くたったので、もはや吹雪一歩手前状態の雪のなか、慌ててバス停へ。さささ寒い。このバスを逃すと次は2時間後。即身仏になってしまうよ。
3分遅れてバスが来たときは本当にホッとした。
草軽交通と西武交通が走る、草津―軽井沢間は、群馬から長野にかけての山道。
途中は白根山や浅間山、嬬恋村なんかを通り、いかにも高原といった風情。
こんな変わりばえのしない風景が延々続くわけで。一応バス側も気を遣ってくれているのか、観光ガイド的なテープが流れるのだけれど、
「このあたりの主要産業は農業と林業です」
…そりゃそうでしょうよ。見りゃわかるよ。
ヒマなので撮影。
…はい、まったく変わりません。
ちなみにこの季節、バスはほとんどノンストップ。何とか山にも何とか湖にも向かう人は一人もいない。というかバスの客も私一人だ。
実は草津-軽井沢間は半額以下の980円で草津ライナーだかなんだかいうバスも出ている。さっきの意味不明なガイドテープもそんな対抗策なのかもしれない。
まあ実際クルマでくる人がほとんどだろうし、今日に限っては天気予報も雨なので、さらに人はいないみたい。
草津ライナーにしなかったのは単に予約の仕方を調べそこねただけなんだが、ただ損するのもしゃくなので、西武バスの特典らしい、途中下車乗車券を使うことを思い立つ。
とは行っても次のバスがくるのは10分後。何とか山じゃ時間は潰せないので、とりあえず草津と軽井沢の真ん中あたり、浅間山観光スポットらしい「鬼押し出し園」で途中下車。
で、降りたら。寒いんですけど!というか思いきり雪降ってるんですけど!
遠ざかっていくバスにこんなに心細さを覚えたことはない。
熱いお湯に入って、ぐっすり就寝。
朝は8時に朝食。おひつのなかには昨日の二倍くらいの白米が入っていた。何なんだ。
ペンションで無料券をもらったので、まずは「大滝の湯」へ。大きなセンターのようになっていて、人もいっぱい。通常の入場料は800円らしい。女性風呂は内湯も露天も広々していて気持ちよかったー。でも、お湯はやや熱めだからぬるめ派にはきついのかな。
槽によってお湯の温度が違うという「合わせの湯」がちょうど女性専用時間帯だったので、それにも入る。熱いお湯は好きだけど、一番熱いのは灼熱地獄で灼け爛れるかと思ったよ。
大滝の湯を出て、草津のシメは、Yahoo!知恵袋(笑)ですすめられた、外湯「地蔵の湯」。
地蔵の湯は、湯治の人用に時間湯なんてのもあるらしいけど、今回は普通の共同湯。なかは脱衣所の後ろがすぐお風呂で、やはり地元らしき人が二人。
お湯は熱め適温でここも気持ちいいー。個人的には大滝の湯よりくつろげたかも。
30分くらいで出ようとすると、10年くらいここに浸かってそうなババアに「あらあらもう行くの~」と声をかけられる。沼のナマズという言葉がなぜか頭に浮かんだ。
うん、私はもう行くよ。あなたはあと10年くらい浸かっているといい。
・・・とはもちろん言わず「バスがあるので~」とにこやかに立ち去る。草津はいいとこだが、ババアはすべからくおせっかいだな。
湯畑に出て、おみやげの温泉まんじゅうを買い込み、バスターミナルへ。昼間の湯畑もいいね。
軽井沢行きのバスチケットを2200円で購入。さよなら草津。思った以上にいいところで、あふれんばかりのお湯が気持ちよくて癒されまくりでした。
というわけで、いざ軽井沢へ。
ババアへの怒りはさておき、おいしい食事で満腹になり、再び湯畑へ。
中心地だけに人出もあり、あらためて付近の土産物屋をのぞいたり、焼き鳥を立ち食いしたり。
何だか謎の土産物パワーに釣られて、安くてよくわからんものをちまちま買い込んでしまった。
以下、小さな無駄遣いの数々。
・草津湯の花100円
(たぶん風呂場に放置して使わない)
・草津温泉マップ20円
(東京帰ったらおそらく見ない)
・招き猫のミニ財布250円
(かわいいけどたぶん使わない)
・草津温泉マンシャプーペン360円
(絶対いらない)
ぶらぶら歩いて『草津逃避行』の第一章にでてきた喫茶店、ぐーてらいむに入る。日く、ぐーてらいむは「よい旅を」って意味なんだとか。
女が、草津から、帰りたくないとか、駄々をこねて、男が、延泊を決める。女が、感激して、キスをする。マスターが「長年、喫茶店を、やってますが、店でキスをしたのは、お客さんが、初めてですよ」とか、言う。
第一章しか読んでないけど、たしかそんな場面だったような。
(わざわざ言うの感じ悪いけど、句点の乱打はもちろんわざとです)
ブレンドを注文。一口目のブラックもおいしいけど、砂糖とミルクを入れてまったり染み渡るかんじもいいね。
今度はさくさく歩いて、21時半くらいに宿にもどる。
で、つい車内販売で買ってしまっただるま弁当なんかを夜食に食べるから太るんだってことは、よくわかってます。
しかし煮豆も山菜も栗の甘露煮もあんまり好きじゃないけど、だるま弁当はおいしい。摩訶不思議。
テレビが今時2時間100円らしいので、今日4回目のお風呂に入って、AQUOS携帯でテレビみながら寝ます。
親切なペンションのご主人(マスターとかオーナーとかいうのかもしれないが知らない)に案内され、さっそく夕食。
隣で息子さんがイタリアンをやっているらしく、その息子なのか別の息子なのか知らないけれど、二人がかりで解説してくれる。
親子の合作なのか和洋がせめぎあう献立。箸とフォークとナイフがおいてあり、激しく無節操だがおいしいからいいや。
ポークステーキ
マグロとイカの刺身
山菜の小鉢
キノコを酢で和えたもの
キノコを辛味噌で和えたもの
ムラサキ何とかダケのホイル焼き
花豆
牡蠣のオイルづけ
松茸と海老の土瓶蒸し
ごはん
柿のデザート
旅先を選ぶときに海か山かと迷ってつい海にしてしまう理由のひとつに、山の宿の定番料理が苦手というのがあって。食べられないほどではないけれど、鯉と猪と馬刺しと山菜の瓶詰めが、今並べた順にキライです。
だから、今回はけっこう覚悟していたんだけど、ご主人がとってきたというキノコや山菜は大変素晴らしく、和洋ともに充実でおいしい。お値段的にも感動。口コミがいいのもわかる。
食事中はご主人と息子で、宿泊客に、ムラサキ何とかダケの説明とか毒キノコの見分けかたとか写真つきで話してくれる。
ちなみに居合わせたのは、親子らしき女性二人と、いきなり辛味噌を「もっと食べたい」とか主張し、購入して食べだした謎の中年夫婦、それに憎たらしいババアの集団。
湯畑に行きたかったので、毒キノコの話の途中で早々と引き上げたら、背後から「あら、ごちそうさまですって」とかいうけたたましい笑い声が聞こえてうっとうしいことこのうえない。
おかげで出がけに「草津は初めてですか」とか気を遣って聞いてくれたご主人に「数年ぶりです。今回は高崎まで出張だったので」とかいう無駄な嘘をついちゃったじゃないか。ババアのバカ(←自意識過剰な自分が悪い)
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旅行&休日日帰りの話をメインに本と食べ物の話がちょこちょこ出ると思います。
旅の下調べに使えるブログを目指したいです。